AIトレードは再び光関連へ
AI関連のトレードは、これまで何度も対象を変えてきました。最初はGPU、次に電力、そしてメモリー。しばらく光関連に注目が集まったかと思えば、また演算資源に戻り、そしてメモリーへ——そして今、再び光関連です。ただし今回は、物理的な制約と政策の両方が重なって、光関連を新たな高みへ押し上げようとしています。
銅配線は1メートル未満であれば機能しますが、30メートルを超えると実用的ではなくなります。そのため、ハイパースケール・クラスタ内のラック間・スイッチ間の通信はすべて光ファイバーを経由する必要があります。
ゴールドマン・サックスは、これまでほぼ100%銅配線だったラック間光通信市場について、2028年までに750億ドル規模になると試算しています。AIチップ1ポッドあたりのネットワーク機器コストは、約31万5,000ドルから940万ドルへと29倍に膨らむ見通しです。ゴールドマンはまた、インジウムリン(InP)レーザーウェハーの供給が2027年まで逼迫した状態が続くと予想しています。
Coherent(COHR)、Lumentum(LITE)、AAOI(AAOI)は、2週間前の急落の後にいずれも大きく値を戻しています。これを後押ししたのが政策面のきっかけです。ロイターの報道によれば、FCC(米連邦通信委員会)は中国製の新規光トランシーバーの輸入を禁止する規則を検討中とのことで、この報道を受けて関連銘柄は軒並み急伸しました。
市場はこの型にはまる銘柄であれば何でも買いに走っています。AAOI、COHR、LITEが主要3社ですが、どれを保有すべきなのでしょうか。

本当に重要なレイヤーはどこか
ここで科学的な仕組みを整理しておきます。「トランシーバー」とは、光ファイバーケーブルの両端に取り付けられる小型の着脱式ユニットです。片側で電気信号を光に変換し、反対側で再び電気信号に戻します。単一の部品ではなく、基板・筐体・制御チップ、そして実際の仕事を担うレーザーダイオードからなる組み立て品です。
このレーザーは、インジウムリン(InP)のウェハー上に層を重ねて成長させる必要があります。他のほぼすべてのデータセンター向けチップを支えるシリコンには、この役割を果たせません。InPを製造できるのは3社のみです。住友電気工業(世界シェア約42%)、AXTとその子会社である北京同美(約36%)、JX金属(約13%)です。
世界シェアの90%超をこの3社が占め、いずれもほぼフル稼働の状態です。しかし不足の原因は工場の生産能力ではなく、熟練の技術にあります。
InPという制約
【補足】InP(インジウムリン)基板とは
InP(インジウムリン)は、光を発するレーザーチップの土台となる特殊な結晶材料です。パソコンやスマートフォンのチップに使われるシリコンとは異なり、光を効率よく生み出す性質を持つため、光通信用レーザーには欠かせません。InPの結晶(ボウル)を育てる工程は、量産型の製造業というより職人的な技能に近く、良質なウェハーができても、トランシーバーメーカーとの認証作業に何年もかかります。資金を投じれば解決するという性質の制約ではない点が、この供給網のボトルネックを構造的にしています。
3社が賭けている場所
結晶・レーザー・モジュール・システムという積み重ねの構造こそが、AAOI・Lumentum・Coherentがそれぞれ異なる投資対象である理由です。3社は、このスタックの異なる段階に賭けているのです。
AAOIは自社でInPレーザーチップ(800G/1.6T規格の標準であるEML)を製造し、テキサスと台湾でモジュールに組み立てています。多くの組立業者が持たない、実質的な垂直統合を実現しています。ただしウェハー自体は購入しており、自社が制御できない基板の制約の上に強みを築いている格好です。システム層の事業も持っていません。
Lumentumは、コンポーネント部門(レーザーチップ、ポンプレーザー、iPhone向けVCSELなど)とシステム部門(Cloud Light買収で強化)に分かれています。高性能レーザーチップ市場では推定50〜60%のシェアを持ち、3社の中で最も「堀」に近いものを備えています。ウェハーラインも3インチから4インチへの移行が進んでいます。同社の本当の差別化要因はシステムアーキテクチャで、光回路スイッチ(OCS)を手がける数少ないサプライヤーの1社であり、CPO(コパッケージド・オプティクス)の受注残も、次世代スイッチ設計に食い込んでいることを示しています。
Coherentは、この積み重ね全体を自社で押さえにいっています。EMLレーザーとCWレーザー、VCSEL、シリコンフォトニクス、受光素子、完成品トランシーバーまでを自社で設計・製造し、外部委託しているのはDSP(デジタル信号処理チップ)のみです。さらに川上では、2025年8月に世界初の6インチInPプラットフォームの生産を開始しました。現在4拠点で立ち上げ中で、従来の3インチラインに比べて1枚のウェハーから取れるデバイス数が約4倍、コストは半分になるとしています。これが量産規模で実現すれば、コスト構造そのものを飛び越える動きであり、3社の中で唯一、供給網に依存するのではなくボトルネックそのものを握りにいく動きです。

(出典: The Pragmatic Investor)
まとめると:
- AAOIは自らコントロールできない基板の逼迫に晒されています
- Lumentumはレーザーチップ市場の上位シェアに加え、次世代スイッチ事業という実質を備えています
- Coherentだけが、結晶そのものを支配しにいっています
どの銘柄が最良なのか
AAOI
AAOIは非常に好調な四半期を発表したばかりです。売上高は1億9,190万ドル(前年比86%増)で、第3四半期のガイダンスは2億5,500万〜2億9,000万ドル。それでも株価は5月の184ドルから7月末には94ドルまで下落し、FCCの報道のみを材料に140ドル台まで戻しています。
同社はレーザー・モジュール事業を手がけるものの、基板を自社で持たず、利益の余裕もありません。直近12か月の売上高は5億700万ドルであるのに対し、4,300万ドルの損失、フリーキャッシュフローはマイナス4億4,900万ドル、純現金はわずか1億5,900万ドルしかありません。売上高1ドルに対しほぼ1ドルの現金を燃やしている計算で、工場の増設と規制の行方という2つの不確実性に同時に資金を投じている状態です。
この銘柄はトレード対象であり、保有する対象ではないと考えています。

Lumentum
Lumentumは、18か月前に市場が評価していたよりも明らかに優れた事業になっています。売上高は約8億800万ドルとほぼ倍増し、OCS(光回路スイッチ)の受注残高は4億ドル超、2027年に納品予定のCPO受注も抱えています。高性能レーザーチップ市場でも推定50〜60%のシェアを持ち、このグループの中では最も「堀」に近いものを備えています。
しかし、3社の中で最も株価評価が高く、レバレッジも最大です。負債資本比率はCoherentの0.31倍に対し1.11倍で、希薄化の懸念も未解決のままです。PEGレシオで見るとCoherentより割安に見えます(0.49倍 対 0.89倍)。OCSとCPOの立ち上がりが2027年までに計画通り進むと確信できるのであれば、Lumentumの方が優れた選択かもしれません。
私はそのタイミングに十分な確信を持てていません。保留です。

(出典: Yole Intelligence)
【補足】PEGレシオとは
PEGレシオは、株価収益率(PER)を利益成長率で割った指標です。単純なPERだけでは「成長率の違い」を考慮できませんが、PEGレシオを使うことで、成長スピードに対して株価が割高か割安かを比較できます。数値が低いほど、成長の割に株価が控えめと解釈されます。
私が購入した銘柄
Coherentは、いまやデータセンター事業の比率が売上の75%を占め、その部門でマージンも拡大しながら圧倒的な強さを見せています。連結ベースの成長率21%という見出しの数字は、伸びの遅い既存事業が、はるかに速い事業を薄めて見せているだけです。
バリュエーション評価
同社はAXTと3年間のInP供給契約を結んでいるほか、自社のウェハー拡張についてCHIPS法に基づく融資意向表明(LOI)も得ています。つまり、購入と自社生産の両面からボトルネックを押さえにいっているのです。最大の基板サプライヤーであるはずの住友電気工業でさえ、自社での消費が増えるにつれて、供給元から競合へと立場を変えつつあります。

数字で見ると、Coherentは黒字化している2社のうちフォワードPERでは割安な方です(44.6倍 対 55.7倍)が、成長調整後のバリュエーション(PEGレシオ)ではLumentumより割高です。その代わりCoherentが持つのは、より健全なバランスシート、自己資金でまかなえる成長、そして空売り比率わずか3.3%(他の2社は11〜13%)という点です。

(出典: S&P Global Market Intelligence via stockanalysis.com)
【補足】空売り比率とは
空売り比率とは、発行済み株式のうちどれだけが空売り(株価下落を見込んだ売り建て)されているかを示す指標です。比率が高いほど、市場に弱気な見方が多いことを意味します。逆に比率が低いCoherentは、市場参加者の間で弱気な賭けが少ないことを示しています。
リスク
ここに挙げたどれも、安全な選択ではありません。フォワードPERで約45倍、実績PERで139倍という評価は、成長ペースが続くことを前提にしています。FCCの規則も現時点ではあくまで草案であり、発効日も決まっていません。InPへの依存は、中国が輸出規制をさらに強化した場合には諸刃の剣にもなり得ます。
結論
私がCoherentを購入するのは、AIスタックの中で最も物理的な制約を受けているレイヤーにおいて、最も質の高い資産だからであり、バリュエーションが割安だからではありません。ポジションのサイズは、それに見合った形にしています。