バリーの空売りは早すぎたのか、それとも正しかったのか
8月6日、マイケル・バリー氏は自身のニュースレター「Cassandra Unchained」で、Nebius(NBIS)を211.77ドルで、Oracle(ORCL)を144.63ドルで空売りしたことを明らかにしました。同氏はこの取引について、樽の中の魚を撃つようなものだと表現しています。
注目すべきは、同氏がプットオプションではなく現物株を空売りした点です。インプライド・ボラティリティが100%を超えており、オプションの価格が割に合わなかったためです。
同氏の論拠自体は単純で、それ自体としては筋が通っています。AIインフラ企業は高額なGPUの減価償却を実態より遅く計上しており、その結果、利益を実態より大きく見せているというものです。同氏はOracleの利益について、2028年までに26〜27%過大計上されている可能性があると試算しています。また、長期のリース債務が売上高を大きく上回っている企業群を、「太って大きく、撃ちやすい魚」だと表現しています。
その後もバリー氏はNVIDIA(NVDA)とPalantir(PLTR)のプットオプションを積み増し、Caterpillar(CAT)の空売りも積み増しました。さらにOracleへの空売りを再び積み増し、現在の局面を2005年、住宅ローン市場が崩れる直前の状況になぞらえています。

この空売り公表は、短期的には効きました。Nebiusは週間で約12%下落。DA Davidsonは8月7日に目標株価を250ドルから175ドルへ引き下げ、Vineland拠点での遅延の可能性を指摘しました。6月にはほぼ300ドルに迫っていた株価は、決算発表を前に190〜193ドル前後まで下げていました。
そして決算が発表されると、株価は34.14%上昇して259.20ドルで引けました。2025年9月以来、最大の1日の値動きです。
私たちは先週のうちに株式を追加で購入していました。
Nebius決算:好調な内容
まず見出しの数字から確認します。いずれも良好な内容です。
- 調整後EPSはマイナス0.12ドルで、市場予想のマイナス0.67〜0.82ドルのレンジを大きく上回りました
- ARR(年間経常収益)は3月末時点の19億ドルから56%増加しました
- グループ調整後EBITDAは前四半期比で1億670万ドル改善しました
- 通期ガイダンスは全項目で据え置かれました。売上高30〜34億ドル、期末ARR70〜90億ドル、調整後EBITDA利益率約40%、設備投資200〜250億ドルです

本当に注目すべき点:契約条件の再価格形成
Nebiusは第2四半期に、Reflection、Cohere、名前非公表の米国新興AIラボ、そして米国の大手クオンツ取引会社との、それぞれ総額10億ドルを超える大型AIクラウド契約を4件成立させました。
第2四半期に成立した契約の総額は、前四半期比でほぼ4倍に拡大し、新規顧客からの契約額に限れば9倍以上に伸びています。MW(メガワット)あたりの年間契約金額も、2026年の基準値である約1,200万ドルから、第2四半期の契約では2,000万〜2,500万ドルまで上昇しました。第3四半期で交渉中の短期容量契約は4,000万〜5,000万ドルのレンジに入っており、Nebiusはすでにその第1号となる契約に署名しています。最初の容量オークションでは、これまで同社がBlackwell向けに請求した中で最も高い価格からさらに15%高い水準で落札されました。
契約の回収期間は1年10か月まで短縮しました。これは、バリー氏の主張と真正面から矛盾する数字です。第2四半期に成立した契約について、設備投資と関連する運営コストの回収にかかる想定期間は22か月まで縮まりました。これは、従来の2〜3年というレンジからの大幅な短縮です。GPUクラスタが22か月で投資額を全額回収できるのであれば、耐用年数を4年とすべきか6年とすべきかという議論は、支払い能力そのものを問う話ではなく、二次的な会計上の論点に格下げされます。
バリー氏の主張が成立するには、これらの資産が陳腐化する前に十分な収益を上げられないことが前提になります。しかしNebiusは、直近のコホートが2年未満で投資回収できると述べたうえで、価格まで引き上げているのです。
もう一つ、この決算で最も過小評価されている開示だと思う点があります。旧世代GPUの価格が、第1四半期比で30%以上上昇したことです。急速な陳腐化を前提とするベア派の見立てでは、新しい半導体が出荷されるにつれて、旧世代の経済性は劣化していくはずです。しかしNebiusが示したのはその逆でした。旧型チップの値段が上がったのです。これは本物の供給不足が起きているときに見られる現象であり、減価償却を偽装しているという見立てとは、非常に整合しにくいものです。
資金調達の構造も、Nebius自身の負担を軽くする方向へ動いています。第2四半期の契約のうち約70%に顧客からの前払いが含まれており、これは過去最高の水準で、関連する設備投資の50〜60%をカバーしています。同社は2026年に90億ドルを超える顧客前払いを見込んでおり、契約総額は400億ドルを超える見通しです。7月には、投資適格の顧客との契約キャッシュフローと稼働済みGPUインフラを裏付けに、SOFR+250ベーシスポイントで7億7,500万ドルの担保付き資金調達を初めて実行しました。さらに新しいアセットライト型のパートナーシップモデルでは、パートナー側がデータセンターの資金調達・建設・所有を担い、Nebiusはソフトウェアスタックとシステムアーキテクチャ、需要開拓の部分を提供し、自社のバランスシートへの負担を最小限に抑えながら高マージンの収益を得る形になります。

(出典: Nebius 決算資料)
これが、私がバリー氏と意見を異にする核心部分です。同氏の空売りは、レバレッジに賭けた取引です。しかしNebiusは今四半期、資本の重みを顧客とパートナーのバランスシート側へ体系的に移していました。設備投資の50〜60%を顧客前払いで賄っている企業は、与信の窓口が閉じたときに破綻する側ではなく、破綻する側から資産を買い取る側です。
CEOのヴォロージュ氏は決算説明会で、2027年分の容量を今すぐ全て売却することもできるが、あえてそうせず、より短期で高単価な契約のために容量を温存していると述べました。2026年末までの契約済み電力ガイダンスは、前四半期時点の4GWから5GWへ引き上げられ、2027年以降は年間1GW超のペースで展開する計画です。
【補足】回収期間(ペイバック期間)とは
回収期間とは、投じた設備投資の元を取るまでにかかる期間を指します。GPUクラスタであれば、そのクラスタが生み出す収益・コスト削減効果の累計が、設置にかかった費用と同額になるまでの期間です。この期間が短いほど、資産が陳腐化する前に投資額を回収できる余地が大きくなります。Nebiusの場合、この期間が2〜3年から22か月へ短縮したことは、GPU資産の実質的な収益力が高まっていることを示す材料として扱われています。
本当のリスク
ここまでの内容を踏まえたうえで、バリー氏の弱気材料についても向き合っておきます。
耐用年数の延長
Nebiusは、サーバー・ネットワーク機器の耐用年数を、2026年より前の4年から5年へ延長しています。これは、まさにバリー氏が空売りの根拠としている論点そのものです。耐用年数を延ばせば、計上される減価償却費は減り、GAAPベースの決算は良く見えます。
減価償却費は2億5,970万ドルで売上高の45%となり、前年同期の72%から低下しました。この改善の一部は事業の効率化によるものですが、一部は耐用年数の変更によるものです。仮に従来の4年のままだったなら、四半期の減価償却費はより大きくなり、GAAPベースの純損失もさらに拡大していたはずです。
この点には二つの反論があります。第一に、調整後EBITDAは減価償却費を完全に除外した指標であるため、市場が実際に取引材料としている数字自体には影響しません。第二に、回収期間の数字が実態を反映しているのであれば、5年という耐用年数はむしろ保守的な設定だと言えます。とはいえ、この変更が行われたこと自体は事実であり、しかもそれは報告数値にとって有利な方向への変更でした。この点に触れずにバリー氏の主張を退けるのは、十分な検証をしていないことになります。
Vineland拠点の建設停止命令
米ニュージャージー州ヴァインランド市は、Nebius向けにDataOneが建設中の拠点で、Bloom Energy製の燃料電池とLNGタンクが無許可で設置されていたとして、2件の建設停止命令を出しました。決算説明会でこのプロジェクトについて質問されたNebiusの経営陣は、計画通り進んでいると回答し、公聴会についても通常のスケジュール通りだと説明しましたが、建設停止命令については触れませんでした。この件は、Bloom Energyの空売りを保有するHunterbrook社が最初に報じています。
これが重要ではない可能性もありますし、許可が来週にも下りる可能性もあります。しかし、規制当局がプロジェクトの工事を停止させた数日後に、その件について直接質問された経営陣が、停止命令に触れないまま回答したという事実は、開示姿勢について何かを物語っています。この点は改善してほしいと感じています。
株価水準についての見立て
数か月前に、私は400ドルへの道筋を示しました。その見立ては今回の決算を経て、実現する可能性がさらに高まったとみています。テクニカル面の状況もこれを裏付けています。
先週指摘した通り、株価は200日EMAからきれいに反発しました。もう少し長い調整局面が続く可能性も考えていましたが、実際には抵抗線を明確に上抜けし、220ドルの水準がサポートに転じています。
週足チャートは、次に何が起こりうるかを示す材料になります。Nebiusはこれまで教科書的な5波構成を形成しつつあり、現在は最終波である第5波に入りつつある局面かもしれません。この第5波自体も、さらに5つの小さな波に分かれる可能性があります。フィボナッチ・エクステンションに基づくと、410〜480ドルのレンジは十分に達成可能な水準だと考えています。

(出典: TrendSpider)

(出典: TrendSpider)
【補足】エリオット波動とフィボナッチ・エクステンション
エリオット波動とは、相場が上昇5波・下降3波という一定のパターンを繰り返しながら推移するという考え方に基づくテクニカル分析の手法です。フィボナッチ・エクステンションは、直前の値動きの幅を一定の比率(1.618倍など)で伸ばし、次の値動きの目安を推定する手法です。いずれも将来を保証するものではなく、過去の値動きのパターンから可能性のある水準を推定する分析手法の一つとして使われています。
結論
私はNBIS株の保有を継続しています。今回の決算は、これまで以上に投資の前提を裏付ける内容でした。
Nebiusは、値上げ余地のある契約基盤を持ち、設備投資の多くを顧客資金で賄い、事業の成長をバランスシートのリスクから切り離しつつあるアセットライト型のモデルを育てている、契約済み資産の保有者です。これは、AIの与信サイクルが転換したときに実際に崩れるであろう、まだ収益化前の投機的な銘柄群とは、根本的に性質の異なる存在です。そしてこの違いこそが、バリー氏の空売りが捉えきれていない部分だと考えています。