トランプ政権は、足元の原油価格の上昇に動じていないように見えます。この時期としては記録的な水準のガソリン・ディーゼル価格が、消費者にも企業にものしかかっているにもかかわらずです。
私は原油の急騰がイランとの戦争の緩和につながると考えていました。しかしドナルド・トランプ大統領は昨日、価格が下がるのは中間選挙の直後だと言い切りました。イランは意図的に戦争を長引かせ、米国経済に痛みを与えて中間選挙の結果に影響を与えようとしている、というのが大統領の見立てです。
そして選挙が終われば、イランはそれ以上持ちこたえられずエネルギー価格は急落し、ガソリンは1ガロン2ドルを下回ると主張しています。この話をどう受け取るかは、読む側にお任せします。私は強い留保を持っています。

(出典: Finviz)
中国の買い増しという新たな重石
事態を悪くしているのが、中国が原油の購入を増やしていることです。ここ数か月は大きく抑えており、それが価格の上昇を抑える働きをしていました。もし爆撃が中間選挙を越えて続くなら、今年の残りを考えるうえで新たなリスクとして織り込む必要があります。

(出典: Bloomberg)
トランプ大統領による「中間選挙の直後に原油とガソリンが急落する」という見通しは、イランへのメッセージであると同時に、FRBへのメッセージでもあったと私は考えています。ケビン・ウォーシュFRB議長が大統領の標的になりたいとは思わないでしょうし、この事実が来週の会合で利上げに反対する判断に大きく作用すると見ています。
エネルギーより重要なのは、債券利回りの上昇
エネルギーコストの上昇よりはるかに重要なのが、イールドカーブ全体での債券利回りの上昇です。その一因はインフレへの懸念にあります。
スコット・ベッセント財務長官が長期金利の上昇を食い止めようとした試みは、聞き入れられませんでした。買い戻しの規模を3倍の60億ドルに拡大すると発表しても、10年債利回りが4.85%の新高値を付けるのを止められなかったのです。
より心強い材料は、昨日実施された390億ドルの10年債入札に、2019年以来もっとも強い需要が集まったことです。応札倍率は2.71倍でした。言い換えれば、発行額のおよそ3倍の需要があったということです。

(出典: Bloomberg)
これは、株式の評価を大きく圧迫しかねない5%という節目を、今年のうちに超える可能性がむしろ低いことを示しています。現在の利回りは、いまの経済の姿と釣り合う水準に落ち着きつつあるのかもしれません。
入札の強さをどう測るか
【補足】応札倍率とは
国債の入札で、発行額に対して何倍の応札が集まったかを示す数値です。2.71倍なら、売り出された額のおよそ3倍の買い注文が入ったことになります。この数字が高いほど需要が強く、利回りは上がりにくくなります。逆に低ければ買い手が足りず、利回りは上がりやすくなります。今回の水準は2019年以来の強さで、金利上昇が一方通行ではないことを示す材料になりました。
PERはむしろ年初より下がっている
長期金利が上がるとき、株式の投資家が最も気にするのは、将来の利益がより大きく割り引かれ、それに見合って評価が下がることです。とりわけ成長株でその影響が大きくなります。
割り引く率が上がるということ
【補足】金利が上がるとPERが下がる仕組み
株価は、その会社が将来生み出す利益を今の価値に割り引いて評価したものと考えられます。金利が上がると、この「割り引く率」も上がります。 遠い将来の利益ほど強く割り引かれるため、利益の大半が先にある成長株は、より大きく評価を下げやすくなります。だから金利上昇局面では、同じ利益でも市場が払える倍率(PER)が下がります。
利益が株価より速く伸びている
ただし弱気派が見落としているように思えるのは、今年の利益予想がS&P500(SPY)の値上がりよりも速いペースで増えていることです。その結果、今日の評価は年初より低くなっています。
指数はおよそ12%上昇した一方で、利益は16.4%増えました。 これにより予想利益に対する倍率は、1月の22倍超から19.5倍へと下がっています。
さらにFactSetのデータでは、2027年の市場予想も16%引き上げられています。来年の予想に対する倍率が20倍まで上がるなら——これは十分に妥当な水準です——指数には8%超、およそ8,300への上値余地があることになります。
20倍が妥当だと考える理由は利益率
市場が20倍の倍率に値すると私が考える主な理由は、利益率が急上昇していることです。市場予想では第3四半期の純利益率は14.9%となっており、1年前の13%はもちろん、5年平均の12.4%も大きく上回ります。
AI投資ブームの「応用の段階」がまだ始まったばかりだと考えるなら、2027年にはさらに利益率が広がる余地があります。ただし、そのためには逆風が弱まる必要があります。
【補足】純利益率が効いてくる理由
売上高のうち、最終的にどれだけが利益として残るかを示すのが純利益率です。同じ売上でも利益率が上がれば利益は増えます。 5年平均12.4%に対して14.9%という水準は、企業が値上げやコスト管理、そして自動化によって効率を高めていることを示します。市場が高い倍率を許容するかどうかは、この利益率が続くと信じられるかにかかっています。
倍率を抑えているのは不確実性
今年、市場の倍率を抑えてきたのは、通商政策と関税、そしてイランでの戦争がもたらす不確実性です。
これらの逆風が消えないまでも弱まると仮定すれば、今年の後半から2027年にかけて、倍率が切り上がるきっかけになり得ます。 それが私の見立てです。マイナスの度合いが小さくなることは、変化率で見ればプラスだからです。市場は絶対的な数値ではなく、変化率に反応します。
金利上昇は「異常からの正常化」
弱気派は、この長期金利の急上昇が強気相場にとって有害だと警告しています。しかし私は、市場が悪い方向に反応するには10年債が5%を超える必要があると考えています。
それでも私は、今回の上昇を死神の到来というより、正常な状態への回帰と見ています。今日の投資家の多くは、世界金融危機より前の相場を知りません。あの危機がFRBによるゼロ近傍の金利の時代を呼び込みました。住宅バブルの崩壊後に景気を刺激するために実施された、極めて異常な超低金利の期間だったのです。

(出典: Bloomberg)
1996年の住宅ローンは6.5%だった
私が最初の家を買った1996年、30年固定の住宅ローン金利は6.5%でした。当時はそれが破格の条件と受け止められていました。 今日では、同じ水準が極めて厳しいと受け止められています。
住宅価格が上がったことを考えれば、その受け止め方に異論はありません。それでもこれは、逆方向の新たな極端というより、正常への回帰に見えます。
【補足】世界金融危機後の超低金利という異常
2008年の危機のあと、FRBは政策金利をほぼゼロまで下げ、その状態が長く続きました。この期間に投資家になった人にとっては、ごく低い金利が「普通」の基準になっています。 上のチャートが示すとおり、より長い歴史の中では今の4%台はむしろ平均的な水準です。「金利が高い」と感じるかどうかは、どの時期を基準に置くかで変わります。
住宅以外への影響はまだ出ていない
金利上昇が住宅市場を超えて消費水準に影響を及ぼす様子は、まだ確認できていません。消費支出は健全なままで、物価変動を除いたベースで前年比2%超の伸びを保っています。
企業の債務水準は高いものの、発行済みの社債の多くは超低金利の時期に発行または借り換えられています。 この面での懸念も和らぎます。
結論:利益が伸びる限り、上値はまだある
今の金利環境は、この先の株式市場にとって倍率の拡大を抑える要因になるかもしれません。それでも利益の成長が続く限り、上値はまだ残っています。
そして現在の金利環境では、借入の削減や、増え続けるフリーキャッシュフローの創出に軸足を置いている企業ほど、倍率の切り上がりを実現しやすいはずです。