11/02/2026
やや強気
ビットコイン (USドル)
やや強気
AIからの資金の戻りと金融緩和で恩恵を受ける位置と、週足・日足の下値の支えを評価

AI株の調整局面で私が加えた3つの備え ビットコイン・VICI・イーライリリー

Main Imageジェームズ・ フォードジェームズ・ フォード
記事要約

    ■AI関連株の調整と3つの備え
    10月はナスダックが5%超下落した一方、ハイテクと通信以外は好調でした。私はAI関連株の保有を続けながら、AI予算に左右されない3つの資産を備えとして加えました。

    ■ビットコインは資金の戻り先
    AI関連の取引に資金と電力を奪われてきたため、AIの投資収益が縮めば資金が戻ると見ています。急落時は一緒に下がりやすく、効くのは月単位です。

    ■VICIは利回り約7.8%の不動産
    カジノの不動産から得る賃料はAIに左右されません。AFFOの約9.5倍の株価水準、9年連続の増配、時価総額の約7.8%に当たる初の自社株買いを評価しています。

    ■イーライリリーはAIに頼らない成長
    7-9月期は肥満症・糖尿病薬がけん引して39%増収でした。ベータは約0.5と低い一方、株価は利益見通しの約38.7倍でチャートも過熱しています。

この記事は約 9 分で読むことができます。(記事文字数:約 4,500 文字)

非常に厳しい1カ月でした。ナスダックは10月に5%を超えて下落し、AI関連株は数カ月にわたって値を下げ続けています。

ところが、市場のほかの部分はまだその影響を受けていません。

米国株のセクター別騰落率(直近1カ月)

テクノロジーと通信サービスを除けば、市場は好調な1カ月を過ごしました。けん引したのは生活必需品などのディフェンシブ株、ヘルスケア、エネルギーです。


AI関連株の調整に、何で備えるか

これはまさに、私たちが想定していた展開です。中間選挙に向けて、AI関連の借り入れの巻き戻しが進み、値動きが荒くなるという見立てでした。10月15日には、2つの備えとして長期国債ETF(TLT)と不動産ETF(VNQ)を取り上げています。詳しくは「AIの隠れた債務・インフレ・中間選挙が重なる局面」で書きました。

今回は、AI関連株への備えとなる資産をさらに3つ紹介します。では、何があればAI関連株への備えと言えるのでしょうか。私は次の3つの条件で考えています。

  • 利益や資産価値が、企業のAI予算に左右されないこと
  • 事業がAIのモデルに置き換えられないこと
  • AI関連株がつまずいたあとに起こりやすいこと、つまり金利の低下、FRBの金融緩和寄りの姿勢、ハイテク株からの資金の移動で恩恵を受けること

この3つの資産は、今後数カ月でいずれも堅調に推移すると見ています。


AI関連株の下落は終わりに近いかもしれない

ただし、はっきりさせておきたいことがあります。次回の記事で詳しく書きますが、AI関連株の下落はまもなく終わる可能性があり、再び大きな収益機会が生まれるのは、AIの供給のボトルネックを握る企業、巨大テック7社、そしてハイテク株全般だと考えています。

次の2本の記事では、なぜ底が近いと考えるのか(マクロの視点)と、いま特に魅力的な銘柄はどれか(業績とチャートの視点)を取り上げます。それでも、資金の移動で痛手を受け、AI関連株に偏りすぎていると感じているなら、ここで紹介する3つの備えが役に立つはずです。


【補足】ヘッジとは

ヘッジとは、保有している資産が値下がりしたときの損失を、別の資産の値動きで和らげることを指します。本記事でジェームズは、AI関連株を手放すのではなく、AI関連株が崩れたときに別の理由で値を保ちやすい資産を組み合わせる考え方をとっています。


ビットコイン(BTCUSD):AIに資金を吸い取られてきた資産

ビットコイン先物の週足チャート

(出典: TrendSpider)

ビットコイン(BTCUSD)は約7万8,000ドルで取引されており、過去最高値の約12万6,000ドルを38%ほど下回っています。同じ期間に、以前なら暗号資産に向かっていた資金をAI関連の取引が吸い上げてきました。私は、それがビットコインの出遅れの大きな理由だと見ています。


マイニング業界でも起きている資金の奪い合い

この資金の奪い合いは、マイニング(ビットコインの採掘)の現場にも表れています。上場しているマイニング企業は、電力をAIや高性能計算向けのデータセンター事業に振り向けてきました。CoinSharesは、2026年末までに上場マイニング企業の売上高の70%を、AIと高性能計算の事業が占める可能性があると予測しています。ビットコインのネットワーク全体の計算能力は、2026年1-3月期に約4%低下しました。1-3月期に低下したのは2020年以来です。

ここに、ビットコインが備えになる理由があります。AIの投資収益が縮み始めれば、追加の資金や追加の電力には、戻っていく先がはっきりとあります。さらに、AI関連の信用不安がFRBの利下げを早めれば、それは過去にビットコインが反応してきた資金の潤沢な環境そのものです。


備えとして効くのは日単位ではなく月単位

ただし、注意点があります。ビットコインは今年、ナスダックと連動して動いてきました。しかもその関係は一方向に偏っており、ナスダックの下落にはぴったり付いていく一方で、上昇には反応しないことがあります。

そのため、急落の当日には、ビットコインもAI関連株と一緒に下がる可能性が高いでしょう。ビットコインは日単位ではなく、月単位で効く備えです。 証券口座で持ちたい投資家にとっては、iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)のような現物ビットコインETFが最も簡単な手段です。

ビットコイン先物の日足チャート

(出典: TrendSpider)

チャートの形も、これ以上ないほど整っています。安値を付けたあと力強く反発し、いまは週足と日足の両方で重要な下値の支えに位置しています。これは、1つの相場の循環で1度か2度しか訪れない、下振れの危険が小さく上値の余地が大きい形です。


VICIプロパティーズ(VICI):AIでは置き換えられない体験

VICIプロパティーズ(VICI)の週足チャート

(出典: TrendSpider)

VICIプロパティーズ(VICI)は、シーザーズ・パレス、MGMグランド、ベネチアンなど、米国で最もよく知られたカジノのいくつかが建つ不動産を保有しています。ラスベガスで過ごす週末をAIのモデルが置き換えることはできず、VICIの賃料収入もAIへの支出には左右されません。


安定した決算と、初めての自社株買い

7-9月期の決算は安定していました。1株当たりAFFOは4.3%増の0.62ドル、四半期配当は2.2%増の0.46ドルで、9年連続の年間増配です。通期の1株当たりAFFOの見通しも2.47〜2.48ドルへ引き上げました。決算後には、取締役会が20億ドルの自社株買いを承認しています。VICIにとって初めての自社株買いです。


【補足】AFFOとは

AFFO(調整後ファンズ・フロム・オペレーションズ)は、REIT(不動産投資信託)の稼ぐ力を測る指標です。純利益に減価償却費などの現金の出ていかない費用を足し戻し、建物の維持に必要な支出などを差し引いて求めます。REITは配当の原資をこのAFFOで見ることが多く、株価をAFFOで割った倍率は、一般企業の株価収益率(PER)に近い使われ方をします。


いまの株価水準と配当利回り

いま私がこの銘柄を評価する理由は、株価の水準にあります。約23.50ドルのVICIは、2026年のAFFO見通しの中央値(2.475ドル)の約9.5倍で取引されています。年換算1.84ドルの配当に対する利回りは約7.8%です。自社株買いの20億ドルは、四半期末時点の時価総額256億ドルの約7.8%に当たります。

VICIは3つ目の条件も満たしています。AI関連株がつまずいて金利が下がれば、長期の賃貸契約を持つREITは主な受益者の1つになります。これは、長期国債ETFと不動産ETFを取り上げた前回の記事と同じ考え方です。さらに、私たちが使っている転換シグナルの指標が、VICIの週足で上昇への転換を示しました。めったに出ない、強いシグナルです。


イーライリリー(LLY):AIの設備投資に頼らない成長

イーライリリー(LLY)の週足チャート

(出典: TrendSpider)

イーライリリー(LLY)は10月29日、7-9月期の売上高が前年同期比39%増の244億ドルだったと発表し、通期の売上高見通しを910億〜920億ドルへ引き上げました。マンジャロの売上高は65%増の107億ドル、ゼップバウンドは49%増の53.5億ドルです。販売数量は53%増えた一方で実際の販売価格は15%下がっており、成長は、利用しやすくなったことで患者の数が増えたことから生まれています。


【補足】マンジャロとゼップバウンド

どちらもイーライリリーの同じ有効成分(チルゼパチド)を使った注射薬で、マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として承認されています。食欲や血糖を調整するホルモンの働きをまねる仕組みで、同社の売上高の伸びの中心になっています。


決算発表の日に示した、相場からの独立性

このどれも、巨大IT企業の投資額には左右されません。決算発表の日の株価の動きが、それを示していました。10月29日、S&P500が0.3%下落するなかで、イーライリリーは6.6%上昇しています。ベータは約0.5で、市場の雰囲気よりも自社の業績で動く銘柄です。

さらにイーライリリーは、AIの設備投資の危険を負わずに、AIの恩恵を受けられます。AIを売る側ではなく、使う側だからです。1月には、NVIDIA(NVDA)とイーライリリーが共同のAI研究所を発表しました。5年間で最大10億ドルを共同で投じ、AIを新薬の開発に使う計画です。AIで新薬の開発が速く、安くなれば、イーライリリーは研究開発費の面で恩恵を受けます。AIが期待外れに終わっても、イーライリリーの売上高はAIに依存していません。


【補足】ベータとは

ベータは、市場全体が動いたときに、個別銘柄がどれくらい動くかを表す数値です。1なら市場と同じ幅で動き、0.5なら市場の半分程度しか動かないことを意味します。ベータが低い銘柄は、相場全体が崩れる局面でも値動きが比較的小さくなりやすいとされます。

イーライリリー(LLY)のバリュエーション指標

(出典: Seeking Alpha)


難しいのは株価の水準

難しいのは株価の水準です。10月29日の終値1,373.70ドルで見ると、イーライリリーは2026年の非GAAPベースの1株当たり利益見通しの中央値35.50ドルの約38.7倍で取引されています。この見通しは、買収した研究開発中の案件の費用で押し下げられており、7-9月期だけで1株当たり4.57ドルに上りました。

チャートも過熱しています。実際、今四半期に市場平均を上回るとは考えていない銘柄で、そこがほかの2つとの違いです。 それでも、AI関連株への本当の備えであることに変わりはなく、状況が悪化すれば最も底堅いのはこの銘柄でしょう。


保有は続け、備えを加える

私はAI関連株を手放すつもりはありません。むしろ、これからも追加していきます。ただし同時に、AI関連の取引がうまくいかなくなる、それぞれ別の筋書きに備えて、3つの資産を加えています。

  • ビットコインは、資金の移動と資金の潤沢さに備えるもの これまでAI関連の取引の資金源になってきたため、AIの投資収益が縮めば資金を取り戻す立場にあります。ただし最初はハイテク株と一緒に下がる可能性が高いでしょう。私は強気の評価を付けます。
  • イーライリリーは、企業業績に備えるもの 40%近い増収は、AI予算ではなく肥満症・糖尿病薬の需要がけん引しています。NVIDIAとの研究所で、AIの設備投資を負わずにAIの恩恵も得られます。私は強気の評価を付けますが、追加するなら株価が下げた場面を待ちます。
  • VICIは、金利と配当収入に備えるもの AIでは置き換えられない資産から約7.8%の利回りを得られ、初めての自社株買いがあり、金利が下がれば上値の余地もあります。私は強気の評価を付けます。

今後数カ月、私が注目しているのは3点です。ビットコインが7万ドル台半ばを保てるか、イーライリリーの10-12月期の販売価格の動向、そしてシーザーズとの賃貸契約に関する新しい情報です。これらの備えは、どれもAIが失敗することを前提にしていません。AIが失敗しないあいだも、保有を続けやすくしてくれるだけです。

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